Shovelog

Snow Lights Films

ケムリ

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歳は40くらいか、肌艶はいいけど天辺が寂しいいつもの店員はお好きな席にどうぞと云った。夕方18時半、平日だからだろうか食堂は空いている。800円の焼肉定食を注文し電子タバコのスイッチを入れる。いや、しかしあらためて言葉で書くと電子タバコというのは絵にならないというか文にならないなあ、味気ないぞとつくづく。しかし医者に肺気腫のなりかけを指摘されてしまった以上、紙巻に戻れるはずもなくいずれこの電子タバコも辞めねばなるまい。一回り上の先輩は肺気腫を宣告され、タバコやめるくらいなら死んだ方がマシだといいながら、一昨年本当に死んでしまった。そうだ、この先輩の墓参りにも行かなくては、とか思い出したけどここは豊橋だ、先輩の墓は世田谷にある。戻ったら忙しくならないうちに行こう。
さて、豊橋でお気に入りのこの食堂は、おそらくボクが子供の時からあるであろう老舗。でもここに住んでいた頃は一度も入った記憶がない。数年前に関東の友人たちと訪れた際に飛び込んだのが最初だった。それ以来のお気に入りの食堂となり帰省の際は毎回立ち寄る。
ボクが注文した後、ほどなくして入ってきたサラリーマン3人組みは生ビールとカルビを注文し、ロースターに火を入れる。ボクの電子タバコのケムリまがいの水蒸気が途切れた頃、今度は彼らの肉を焼くケムリが店内に充満する。換気扇は追いつかない。そうだ、これぞザ・焼肉。昔はこうだった。強烈な焼肉臭は衣服に着いたまま洗濯するまで落ちないし、タバコ臭もそうだった。いつからか世間の空気はクリーンになった。気持ち良いけどどこか味気ない、少しだけ寂しい気がするとか云っちゃう昭和世代のあるある無いものねだり。

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