Shovelog

Snow Lights Films

値上げの告知

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和やかに話していたのに会計の段になって急に真顔で「10月から値上げさせていただきます。」と告げられた。消費税分だけというわけでもなく思い切った値上げだ。
同じ歳の彼とは通って来たカルチャーが近いというのもあってよく話が合う。引っ越してきて間もない頃、近所の事も色々教えてもらった。職業柄というのもあるだろうが、元来話好きなのだろう。格安の店もあるけど、居心地の良さからあえて僕は彼の所へ必ず二ヶ月に1回は通っていた。彼は「常連さんが全然予約が取れなくなっちゃって、止むを得ず値上げします。」と言った。近所の同業店はどんどん廃業している。結果、他からのお客も一見さんもみな集まって来る。商売繁盛いい事だとは思うけど、今の彼には、よっしゃもう一儲けしてやろう、という野心もない。何せ同じ歳だ、齷齪働くのはひと段落でそろそろゆっくりしたい、趣味に時間を取りたい年齢だろう。
いつのまにかこの業界は人材不足となっているようだ。高齢者ばかりで若者のなり手がない。代わりに美容室は石を投げれば当たるくらい商店街に乱立している。
値上げを告知する床屋の主人は申し訳なさそうにというよりも、余所余所しく引き攣っていた。常連さんが来れなくなっちゃって、という言い訳に、僕に向かってそう言った言葉に、私は常連なんだろうかと考え込む。ここへ15年ほど通っているが、まだ常連にはなっていなかったのかもしれない。

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