Hatagaya Shibuya / Nikon FM2
暗い、朝から雨だ。甲州街道をひっきりなしに通る救急車の音が一層大きく聞こえる。緊急事態となってからはさらにその数が増えたのか、やけに耳に入るようになった。裏通りからは勢いよく走るカブの水を跳ねる音。五月蝿いはずの隣のマンション工事は足場が外れてようやく静かになり、代わりにベットの遥か下の方で走る京王線の振動が微かに響いてくる。9月上旬だというのに一昨日から使い出した冬用の布団からなかなか出られない朝、意を決して起き上がり、洗面所の窓から見える鳩の巣の二匹のひなに挨拶をしてコーヒーを煎れる。ああ今日も生き延びたと安心しながら、固まった腰を伸ばす。