黄色いダウンジャケットの男は肩からFM2をぶら下げていた。ストラップは短く詰められ肩にしかかけられないくらいだ。彼は遊歩道の前でタバコを燻らす私の前を何かを探しているように通りすぎ、木立の中へ消えていった。数分も経たないうちにまた前を横切り、しばらく行った所で立ち止まり景色を覗き込む。しかし小さく頭をかしげ、反対側へ歩いていった。そしてまた私の前に現れ横切っていく。この間約10分。カバンも持たずカメラひとつだけ、おそらくご近所さんであろう。私も撮る側だから何となくわかるが、知らない人が見たらまるで不審者だ。街を観察しているようで中判をぶら下げた相当怪しい私には目もくれず、一心不乱に何かを探す。人間には全く興味はなさそうだ。私は彼の事が気になって仕方がない。
