Shovelog

Snow Lights Films

説明できない写真

 

飯を食おうと近所にある沖縄居酒屋に入った。注文を済ませたあと店内をひと回り見渡すと目の前の柱に切れ込みがあり、今にも折れそうに見えたので何となくアイフォンで写真を撮った。確固たる目的意識を以て撮るのではなく何となく撮るというのはボクの写真の常である。アイフォンのシャッター音がすると向かいに背を向けて座っていた中年男性が振り返りボクをひと睨みした後こちらに寄ってきた。そして彼はボクのテーブルに手を付き、今何を撮ったのか?撮った写真を見せてくれと言った。決して喧嘩を売ってくるような言い方ではなかったけれど、あえて面倒くせえなという素振りで写真を見せてやった。すると彼は、あ、いや、俺の後ろ姿を撮られたと思ったもんで、すまんね。と言って席に戻っていった。

長い年月、毎日のように街で写真を撮っているのでこういうシーンは当たり前のように出会す。街角で人様の家を撮っていれば確かに怪しい。その都度「何を撮っているのか」の問いかけに、ただでさえうまく説明できないボクの写真を他人に説明するのが面倒で「なんとなく」と言ってそそくさとその場を立ち去る。都市で写真を撮る行為は今や理由を求められる時代に、無意識のように撮る行為なんてのはあり得ないのかもしれない。近い将来、カメラを持って散歩することすら憚られる時代がやってくるのであろうか。




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