Shovelog

Snow Lights Films

切実なもの

 

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歯医者の治療台に座ったままセンセの診察を待っていた。
隣の椅子では患者にセンセが丁寧に説明している。それでも患者は納得しきれないのか治療AパターンBパターンCパターンまでの説明を要求している。それは次回に説明しますと言っても聞き入れない。何か納得しきれていないようだ。
私の治療が終わり待合室に戻ると、さっきの女性が今度は受け付け係とややこしいやりとりをしていた。ひとしきり文句を言った後に次回の予約について決めかねている。「えっとその日はアレなので、この日はソレだし・・・はあ、どうすればいいのよ」受付係は困ってしまっている。早くしてくれよ、後ろもつかえるじゃないか、と言わんばかりにグイッと横に並び女性の顔を覗き込む。45歳くらいでノーメイク、眉間の皺は刻み込まれてしまっている、超苦手な顔のデザインだ。これ見よがしに横で貧乏ゆすりをするボクは意地悪だけど、この女も相当意地悪そうだ。「じゃあ、この日に予約を一応入れておいて。仮ね。変更あったら連絡するから。」大物女優がマネージャーに指示するようなすげー上から目線の予約は受付係にとっては厄介だ。ようやくボクも清算を終えようとしたとき、入り口のドアが空き老婆が入ってきた。入ってきたというよりドアのところに立ちすくんんでいる。外の冷気が一気に狭い待合室に入り込む。立ちすくんでいると思われた老婆はよく見ると少しづつ進んでいる。パーキンソン的な症状だろうか、このままでは受付にたどり着くまでに全員風邪引いてしてしまいそうなので手助けをしようかと思った矢先、50代の女性が老婆を抱えて中に招き入れる。やはりこういう時は女性だ。しかも若者ではない、50代だからこそ老婆の辛さがわかるというのもある。近い年齢だから理解できる切実なもの、目の前に迫っている老い。これはボクも同じ、もはや目を逸らすことができない現実。

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