Shovelog

Snow Lights Films

怪談

f:id:honday3:20200808150527j:plainTri-X Summicron50/2 Shibuya,Tokyo

朝から猛暑の一昨日、出勤しようと自宅裏に停めてあるバイクのエンジンをかけながら10メートル先の道路端に座り込む女を確認した。茶色のワンピース姿の女は低いレンガの花壇に腰掛けながら小さなスーツケースを弄っている。30代半ばだろうか髪の毛はボブだけど毛先だけが金髪、お世辞にも綺麗とはいえない身なりと相まってどこか普通ではない感じがした。ボクはバイクを始動しその前を通過しようとした時にその女の脚の間からは一本の水痕が流れ出ていたのを見た。驚いて通り過ぎる際にその女の顔を見ると定まっていない視線のその目は驚くほど色がなく、顔は真っ白でまるで蝋人形のようだった。どこかで見たことがあると思ったけど瞬時に思い出した、そう棺の中の人の様だと。その時は失禁していたことが衝撃すぎて状況が判断しきれなかったのだけど、仕事場に着く頃には照りつく太陽の下でも背中に寒気が走り出した。ひょっとしたら朝から見てはいけないものを見てしまったのかもしれないと。
事務所に到着したら電話が鳴った。同僚が車に轢かれた知らせだった。

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